須惠朋子×中村沙絵トークイベント
須惠朋子展のトークイベント「〈はざま〉で問い続けること、描くこと」を開催しました。
ゲストは、東京大学大学院総合文化研究科・准教授の中村沙絵さん。スリランカの老人施設ヴァディヒティ・ニヴァーサで滞在調査をしながら民族誌『饗応する身体』(ナカニシヤ出版、2017年)を執筆された中村さんが、10年以上久高島に通いながら描き続けている須惠さんの絵画をどのようにご覧になるのか、ぜひお話ししていただきたいと考えたのです。
直前まで台風が心配されましたが、会場は満席。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。久高島とスリランカというそれぞれの場所での取材を通して、ともに感覚を開き、自分の身体を通して得た経験を大切にしながら、より「リアル」なものに近づこうとするおふたりの、とても楽しい対話でした。
久高島の風景そのものを忠実に再現しようというより、体感した空気や印象を受けとろうと「できるだけ空っぽになる」という須惠さん。その取材方法に、人類学のフィールドワークを想起したという中村さんが、「ここではないどこか」へ連れていかれるpassage(通路)として須惠さんの絵画を受け取った、と話されていたことも、須惠さんの絵画の魅力と可能性をあらためて考える機会となりました。
そして、岩絵具という画材の魅力、とりわけ粗い絵具の隙間から下の層の絵具が透けて見えるという説明を受けた中村さんが、それは自然界の見え方にも近いものがあって、いろんな粒子が層になって、どこに光が当たるかで全然違う見え方をしていくところは、自分を取り巻いている空気と親和性があるような気がする、指摘されていたのも印象的でした。
須惠さんと中村さんのトークの抄録は、こちらからお読みいただけます。
須惠朋子展「ニライカナイを想う」は11月6日まで開催します。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。